型ガラスを上手に使って快適な暮らし~窓のガラスどうする?

住まいを考える時って、窓ガラスの大きさや形や位置は最初の計画段階からいろいろ考えると思いますが、案外、その窓のガラスの種類って見落としがちになりがちです。

ザックリ言うと、透明ガラスにするか?型ガラス(あるいはすりガラス)といわれる不透明なガラスにするか?を決めるのですが、住み心地に大きく影響するのでよく検討が必要です。

どちらを選んでもそれぞれに、メリットとデメリットがありますから、どの場合でもこれが一番!という正解がないところが難しいところです。

どうやって決めていくかというと。。。

・その住まいの立地条件(隣家とどれくらいの距離か?大きな道路に面しているか?庭はある?塀の高さは?)

・窓のある部屋の用途(リビング?クローゼット?プライバシーを重視すべき場所かどうか?)

・住まわれる方の好み(外から絶対見えたくない慎重な性格orあまり気にしないおおらかタイプ。開放的なインテリアが好きor落ち着いた雰囲気が好き?機能性重視or雰囲気重視?)

の3つがポイントです。

では、それぞれのガラスの特徴や使い分け方について詳しくご紹介します。

型ガラスってこんなガラス

型ガラスは透明ガラスの片面に型で凸凹(デコボコ)とした模様をつけたガラスです。表面は若干凸凹しています。

↓近くに手を近づけてみると、こんな感じです

型ガラス

不透明なガラスには、もう一種類、すりガラスがあります。

↓型ガラスよりも、濁った感じでよりシルエットがわかりにくいです。

すりガラス

サッシメーカーのガラスの標準は透明ガラスと型ガラス(この2つは標準品ということで、どちらを選んでもコストと納期は一緒)です。

すりガラスはオプション扱いになり、コストアップや納期が長くかかるので工務店やハウスメーカーはあまり積極的には採用しません。

ですが、すりガラスの方がおしゃれ感があってインテリアや外観デザインにこだわる方には人気です。

シンプルモダンやレトロなインテリアを目指すなら要チェックですから、ぜひ設計担当者やインテリアコーディネーターに早めに相談してみて下さい。

型ガラス・透明ガラスの使い分け

透明ガラスのメリット・デメリット

メリット

〇透明なので、圧迫感がなく視線が抜けて空間が広く感じる。

〇庭の景色や空の様子などを楽しめる。外の様子を知りたい場合に最適。

デメリット

〇外からの視線が気になる場所で使用する場合は、塀や植栽で目隠しをする必要がある。

〇カーテンやブラインドなどが必要になりコストアップになりがち。

〇型ガラスよりも汚れが目立ちやすい。

型ガラスのメリット・デメリット

メリット

〇外から部屋の中の様子が見えにくいのでプライバシー確保がしやすい

〇汚れが目立ちにくい

デメリット

〇圧迫感や閉塞感があり(特に大きなサイズの窓)空間が狭く感じる。

〇外の様子がわかりづらい

〇インテリア的にはイマイチ

型ガラスだから安心!は危険

型ガラスにした場合のメリットとして”外から部屋の中の様子が見えにくいのでプライバシー確保がしやすい”と上述しました。

でも場合によっては危険です!!

夜間に「照明をつけた状態では意外にシルエットや室内の様子は外からわかります

特に夜に使うことが多く窓際に立つことが想定される”脱衣室や浴室”が道路側にある場合は特に「型ガラスだから大丈夫!」って安心しているとたいへんなことになりかねません。

室内にブラインドをつける、窓の位置を人の背丈以上にする、窓のサイズを小さくする、外部に塀などを設ける。などの対策をしっかりしてください。夜の型ガラスは透ける

型ガラス・透明ガラス使い分けの実例

透明ガラスと型ガラスのメリット、デメリットはわかった。

で、具体的にはみんなはどんな感じで使い分けてるのか~?

知りたいですよね。

今までの私の過去の設計実例でご紹介しますのでぜひ参考にして下さい。

リビングやダイニングなどの大きな窓

リビングやダイニングなどの大きな窓は基本的には透明ガラスがお薦め。ただし、隣家や道路からの視線を防ぐ必要がある場合には塀や植栽などを考えるとか、中庭プランにするとか、きちんと計画する。そうでないと、結局、昼間もレースカーテンをしめ切ったままで、せっかくの開放感が台無しになります。

都市部で住宅密集地の場合は庭や塀を設けることが困難な場合が多いと思います。その場合はあえて透明ガラスの窓の位置を高めにして、ソファに座ったら、影が映らないようにする方法も考えられます。

そういった場合には木製ブラインドなど視線をコントロールしやすいものを使ったり、同じ不透明ガラスでも型ガラスではなく、上述したすりガラスを採用するとインテリア性がグッとあがります。

もし、LDKを吹き抜けにできるのあれば、吹き抜け部分を透明ガラスにすると、空の様子が見えてとても気持ちのいい空間になります。

また、隣の窓が既に正面にある場所に窓を設けざるをえない場合は、後から建てる方の家が、型ガラスやすりガラスを選んでプライバシーに配慮してトラブルを未然に防ぐことも必要になります。

透明ガラス窓のリビングの施工例

透明ガラスなので南の芝生の庭まで視線が伸びて気持ちの良いリビングです。木塀は低めに設定しましたが植栽がじきに大きくなって隣家や道路からの目線を防いでくれれば、さらに落ち着いた暮らしになるはずです。

透明ガラス窓のリビングと書斎コーナーの施工例

▲南側に作った小さなデッキをコの字型の建物と木塀で囲み中庭風にプランしました。木塀の向こうは一段下がった歩道付きの大きな道路です。リビングダイニングの窓は透明ガラス。左手の書斎コーナーの窓も透明ガラスで、アウトドアリビングという言葉通りに家の中と外が一体化しています。

透明ガラス窓に木製ブラインドの書斎コーナーの施工例

▲上の写真の住まいの左側の書斎コーナーの窓は透明ガラスで、こちら側には木塀は無いので、道路からの視線が入らないための工夫として、高さの小さな横に細長い形の窓にしています。さらに木製ブラインドでプライバシーが守れるようにしつつインテリア性も高めています。

透明ガラス窓のリビングの施工例

▲南側の窓は透明ガラスで木塀で視線を防ぎつつ明るい日差しを取り入れています。東側(左側)の窓は透明ガラスですが隣家が迫っているので、あえて窓の位置を高めにしています。木製ブラインドで温かみのあるインテリアに。

透明ガラス窓のリビングの施工例

▲南側の窓を天井までの透明ガラスにしているので、リビングの天井と外のデッキの庇の天井の羽目板(板張り)のつながり感を演出。視線だけでなく気持ちまで伸びやかに感じられる雰囲気が素敵です。

水廻りやクローゼットなど

水廻りやクローゼットなど裏方的な場所は型ガラス(すりガラス)がお薦め。

長時間使う場所でない場合は、坪庭を眺めるとか、そういう楽しみがない場合は型ガラスがお薦め。カーテン類のコストもかからない上にゴチャゴチャしなくて合理的です。

ただし、上述したように型ガラスだから100%プライバシーが守られるとは限らないので、そこは要注意です。

サンルームは「日当たりを重視したいので透明ガラスが良いですか?」と良く質問されますが、型ガラスは表面がデコボコしているので乱反射していて一見弱い光に感じるだけで、透明ガラスと型ガラスは実は日射量は同じです。

対してすりガラスは若干、陽ざしの量が減ります。でも、型ガラスは窓際に干した洗濯物のシルエットが外からヤンワリとわかります。家族に年頃の女性がいらっしゃる場合で、防犯性を重要視する場合は、あえてすりガラスを選ぶことも選択肢としてはありです。

水廻りの中でも洗面室は鏡や収納棚など壁面に窓がとりにくい事が多いもの。そういう場合は鏡の上に窓を設置するのもひとつの方法です。換気のために開け閉めしにくいのでは?と思われがちですが、案外と洗面室の窓って開け閉めしないものです。隣接した浴室の窓を開けたり浴室の換気扇を回したりした方が、湿気を含んだ空気を浴室から呼び込まないのでお薦めです。

透明ガラス窓に木製ブラインドの洗面室の施工例

▲こちらの住まいは窓の向こうに迫った隣家の2階からの視線が気になるので、透明ガラスにしつつ木製ブラインドをつけています。

寝室、子供室などプライベート空間

寝室、子供室などプライベート空間には基本的には透明ガラスがお薦め。プライベート空間はもし型ガラスだとしても、カーテン類はつけますよね。(でないと落ち着かないですよね…)

ですから、プライバシー確保はそちらで解決するとして、カーテンを開けた時に外の様子(お天気とか)がわかる透明ガラスの方が基本的にお薦めです。

ただし、窓の外に隣家の壁や窓が迫っていたり、大きな道路に面していたり。。。。のマイナス要因があるようであれば、型ガラス(すりガラス)が適しています。

さらに型ガラス(すりガラス)であれば、レースカーテンの必要性はなくなるので、カーテン類のコストが若干抑えられる場合があります。

それから、子どもはいちいちカーテンを開けたり閉めたりするのを面倒くさがる場合が多いので、開けっ放しでもプライバシーが確保できる型ガラス(すりガラス)の方が喜ばれるかもしれませんね。(特に男の子の場合)

でも、個人的には窓の外の条件が良いのであれば、閉塞感がない透明ガラスで気持ちよく過ごして欲しいな~と思います。

特に女の子の部屋なら窓のカーテン類もインテリアの大事な要素。”子どもの頃の自分のお部屋が可愛いかった想い出”ってとても素敵な一生の想い出かもしれません。

透明ガラス窓とすりガラス窓の子ども室の施工例

▲2人姉妹で7畳のコンパクトな子ども室ですが、だからこそインテリアはこだわった住まいです。南側(右手)の窓は透明ガラスで抜け感を出しながら、北欧モダンな柄のシェードをポイントに。東側(左側)の窓は隣家が迫っているのですりガラスで机を手前に置くことを想定して何もつけていません。

透明ガラスのテラス窓の子ども室の施工例

▲子どもたちの部屋は明るくしたい!と南側の窓には大きなベランダがついています。透明ガラスなのでレースカーテンとファブリック(厚布)カーテンで陽ざしや明るさをコントロール。正面の小窓も透明ガラスでシェードで優しいイメージで陽ざしをカット。

透明ガラスの窓のカーテンの子ども室の施工例

▲ハウスメーカーのご依頼でデザインしたモデルルームの子ども室。右手の窓も奥の窓も透明ガラスです。実際にはこのようにレースカーテンだけでは陽ざしや視線の問題が発生すると思いますが、子どもさんがまだ小さくて使わないなら、それまでの間だけでもこんなラブリーな部屋だと楽しいかもしれませんね。

透明ガラスの窓の寝室の施工例

▲シックなインテリアの寝室。北側(左側)の窓は透明ガラスで落ち着いた明かりを入れて、東側(ベッド枕元)の窓はすりガラスにして、隣家の視線は防ぎつつ、朝日が差し込む窓です。黄色い柄物の布はパネルカーテンという襞の全くないカーテンです。

玄関ホール、階段室、廊下など通路としてのスペース

こういったそこで何かをする、長く居続けるというわけではないスペースについては、窓からの風景や外部からの視線の入り具合によってケースバイケースです。コストやお掃除の手間などを考えて、合理的に判断するなら型ガラスですが、インテリア的には裏方的なイメージがあるので、すりガラスにするのもお薦めです。

すりガラス窓の玄関の施工例

▲写真左:玄関ホールです。窓の外は駐車スペースで殺風景なのですりガラスにしました。東側なので朝から柔らかい光が差し込んで出勤時に気持ちがいいそうです。写真右:やはり玄関ホールで駐車スペースに面していますし、道路からの視線も気になるので、すりガラスです。シンプルなインテリアに似合っています。

透明ガラス窓の玄関の施工例

▲玄関横の道路側の窓ですが、塀との間に小さな坪庭を設けてその植栽が良く見えるようにあえて透明ガラスです。緑が見えるだけで一気に広々と印象的な空間になります。通過するだけの玄関ならカーテンなど付けなくても大丈夫なので、すっきりと美しく、がお薦めです。

どうしても決められない!!!場合

家族の意見がまとまらない…

隣地が今は空き地だから広々だけど、将来、家がギリギリに建つかもしれない…

カーテン類をどうするか?なんてそこまでまだ考えられない…

そんな風に迷って決められない!!っていう場合は、ひとまず”透明ガラス”にしておきましょう~!!!

住んでからの型ガラスから透明ガラスへの取り換えはガラスの交換になりますので、費用も手間も結構掛かりますが、透明ガラスを型ガラス的な用途に変身させるには、ガラスフィルムというシート状のものを貼れば大丈夫なので、手軽です。

いろんなメーカーや種類のものがありますが、例えばコチラはインテリア業界でもトップメーカーのサンゲツというメーカーのフィルム↓

窓ガラスのフィルム

すりガラスみたいになるフィルム

参考:インテリアシール専門店 スタイルダート https://www.sticker-film.com/

ネット通販でも簡単に購入できますのでDIYでも貼れます。自信がなければ近所の内装屋さんやリフォームショップにお願いすれば施工もしてくれます。

もし、住んでから「やっぱりここは型ガラス(すりガラス)にすればよかった~」っていう場合はこういう解決方法もありますから、ご安心ください。

型ガラス・透明ガラスの選び方のポイントまとめ

①その住まいの立地条件

隣家とどれくらいの距離か?大きな道路に面しているか?庭はある?塀の高さは?

②窓のある部屋の用途

リビング?クローゼット?プライバシーを重視すべき場所かどうか?

③家族の好み

外から絶対見えたくない慎重な性格orあまり気にしないおおらかタイプ?

開放的なインテリアが好きor落ち着いた雰囲気が好き?

機能性重視派or雰囲気重視派?

いろんな条件をシュミレーションしながら、家族でよく相談して、自分たちの住まいにピッタリの窓ガラスを選んで下さいね。

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